シャドーイングの極意

2021年9月19日シャドーイング

シャドーイングは、特に国内のみでの英語学習で、ネイティブとのスピード感あるコミュニケーション力を身につけるためには必須の学習トレーニングである。

筆者も英語教育家時代は、このシャドーイング音読を軸にした多読多聴学習法で、社会人から中高生までここでは書ききれない数多くの実績を上げてきた。中には、帰国子女でもない中学生英検1級合格TOEIC900点以上取得、あるいは高円宮杯全日本中学校英語弁論大会全国優勝した実力をつけた者もいる。大学受験でもセンター試験英語リスニング満点者続出英語も武器東大理Ⅲへの合格、あるいは東大二次試験の英語(120点満点、平均60~70点台)で、107点という帰国子女でもなく日本国内生え抜きの学生としてはあり得ない得点を叩きだせた猛者もいる。

それぐらい、シャドーイング多読多聴音読も併せて)を徹底すればものすごい結果につながる、ということを知ってほしい。


シャドーイングのコンセプト

  • シャドーイングとは、人間が言語を身につけていく過程をそのままトレーニング化したものである。つまり、赤ん坊や幼児は、母親や家族や周りの人々の話すのを聞き、それを模倣して発声しながら言語を体得していく。その人間言語形成における原点であり自然の摂理を、より理論的かつトレーニング性をもたせたものがシャドーイングなのである。
  • 極意は、あたかも自分の言葉の如く発声する。つまり、ネイティヴの音声をまるでシャドー(影)のように追従していくのであるが、だからと言って単なる口真似ではなく文法的にも、ボキャブラリー的にも、表現的にも実際に自分で創作したものであるかの意識をもって発声する。したがって、音源内容の完全把握は大前提である。この極意が徹底されないと、無論、実地の会話など同じようにはスピーキングすることはできない。ただし、これはあくまでシャドーイングの究極形であって、音源内容の難度が高まれば高まるほどその達成は難しくなる。それでもこの究極形を目指していくことが、最大の効果をあげる要諦である。
  • スピードは音源内容の難度に応じて臨機応変に設定。スピードの速い方がよりトレーニング性が高くなり実力がつきやすい

シャドーイングの効能

  • リスニング力の向上は勿論であるが、ネイティヴスピーカーとの対応を可能にする英語力への基礎が形成され、音源内容の難度を上げていくことで無限の進化が可能となる。それは、受験英語に代表される文法偏重かつ暗記型学習では身につけることができない、音とスピードを伴った英語処理能力が確実に高まることを意味する。
  • リスニング練習だけでもいいではないか、と思う人もいるかもしれない。ところがリスニング練習だけでは聞いている途中で意識が飛んでしまって注意散漫になったりした経験はないだろうか。特に音源内容の理解が難しい場合、ある一定時間以上集中力を切らさずに取り組むことは苦痛どころか不可能である。この点、シャドーイングの場合は、ただ聞いているだけでなく発声をしなくてはならない以上、一言一句に神経を集中させて音源を聴き続けなくてはならないため、リスニング練習と比べた時のその密度と質の差は歴然としている。

シャドーイングトレーニング手順 (スタンダード編)

  1. スクリプトを見ずに最低5回以上、静聴リスニング。(リスニングだけで音源内容の意味がどれくらい理解できるかを確認。)
  2. リスニングだけでどれくらい英語の表現/内容/(文法に基づいた)意味が理解できていたかを、スクリプトと照会して確認。                             ※ここであげる、なぜ “文法” の意識が必要なのか? 単語の並びを捉えるだけでも、もちろん漫然とした文の意味は理解可能だ。ただ、そこで満足していては、このシャドーイング学習を通じて、インプットの成果としてはクリアできても、ライティングやスピーキングなど、その後、いざ自らアウトプットしていく場面で(ビジネスシーンや試験など)正確な英文が作れないからだ。とりわけ、言語形成期を過ぎている学習者であれば、その点はこだわりたいところである。
  3. スクリプトの内容確認。(文法と意味)
  4. (必要な場合、スクリプトを見ながら) シャドーイング (内容/(文法に基づいた)意味を理解しながら) 〔状態に応じて、この4はスキップしてもいい〕
  5. (スクリプトを見ずに) シャドーイング (内容/(文法に基づいた)意味を理解しながら)。 <回数無限>                                        ※ただ、漫然とした意味だけではなく、「“文法に基づいた” 意味を理解しながら」の練習を繰り返し強調しているが、そんなことできるのか、と思う学習者もいるかもしれない。もちろん可能である。なぜなら、筆者自身が取り組めているからだ。その際、留意したいのは、ワンフレーズ毎に文法解釈を、それも日本語に置き換えながら頭の中でゆっくり解析していてはとてもではないが、ネイティブの英語音源スピードについてはいけない。
  6.  特に難しいパートや気になるパートは、重点的にパート練習。 <回数無限>
  7. シャドーイングもある境地に入ってくると、内容/(文法に基づいた)意味を理解しながらというのは当然であるが、上記コンセプトで述べたように、あたかも自分がオリジナルに創作し発声した表現や言葉の如く発声できているようになるとパーフェクト。
  • この1 ~ 6(あるいは7まで) のプロセスにかける期間の目安は、音源内容の難度次第。簡単なものは短時間で、難しいものは何日間にも渡って。
  • シャドーイングの完成度は、80% ~ 100%が目安。誇張して言えば、中には100回以上練習しても上手くできないパートもあったりするので、もうそれはパスする。
  • 同じものを何日にも渡って繰り返し練習するのもいいが、ある程度完成した (80% ~ 100%のレベル) と判断すれば、あるいはとても難しくいくら練習しても90%以上には程遠いと判断すれば新しいものに取り組む。そしていずれの場合も、1 ~ 2 週間くらいあけて同じものを再度トライしてみる。この適度な間隔をおいた学習/復習ステップはとても効果的である。より長期的な記憶にもつながっていく。つまり如何なる学習においても復習というものは、常に大切であるが、連続して連日同じものを反復復習する取り組み方もあれば、意図的に敢えてしばらく間隔をあけて取り組む方法もある。両方織り交ぜながらの取り組みを勧める。

シャドーイングに適した教材

※ 必ずスクリプトのついたもの(上述通りに、英文の内容と意味(文法的な解釈も含めて)を理解)

Beginner

多読多聴マガジン http://www.cosmopier.com/eio/

Intermediate

BBC Learning English 6 minute English https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/features/6-minute-english

Advanced

CNN English Express https://ee.asahipress.com/index.php