第13回 【予想を大幅に下回る米雇用統計】 2021年1月10日(日)
※「金融翻訳チャレンジ」メニューでは、毎週、筆者が課題文を提供。金融翻訳に挑戦してみよう!
※ 原文の内容はすべて筆者のオリジナルである。日々世界で起こる膨大な情報ソースを基にしての着想により、金融、経済、社会情勢、あるいは数値などを含め、筆者独自の言葉で創作したnon-fiction (ノンフィクション) もあれば、fiction (フィクション) もある。
※ 翻訳の難易度を高める趣旨により意図的に日本文を長くしていることもある。
※ 筆者模範翻訳は、2021年1月17日(日)掲載予定
<課題文>
米国雇用統計が予想を大幅に下回る結果を受け、不安定な金融市場の金曜となったが、米国株は過去最高の終値を記録した。
労働局発表による12月の非農業部門雇用者数によると、米国雇用者数は15万3千人となり、エコノミスト予想の30万人以上の雇用を大幅に下回った。
<筆者の模範翻訳>
US stocks notched a record close on Friday in what proved to be a volatile day in financial markets on a much-weaker-than-expected December jobs report.
US employers hired 153,000 new workers in December according to the Bureau of Labor Statistics’ monthly non-farm payrolls report — far below the level of at least 300,000 jobs that economists had expected.
<解説>
『米国雇用統計が予想を大幅に下回る結果を受け、不安定な金融市場となったが、米国株は過去最高の終値を記録した。』
「〜 を受け」 = on
「〜 を受け」 とする金融表現は多い。同義で、「〜 の流れの中」、「〜 を背景に」、「〜 のため」 とも表現される。その際の翻訳としてよく知られているのは、
- due to
- caused by
- following
- owing to
- thanks to
など、たくさんあるが、日本人には意外と知られていないのが、この on。
ネイティブは、金融表現では特に、この on でライティングすることが多いので、この機会にぜひ覚えておこう。
「雇用統計」 = jobs report.
毎月、第一金曜日に米国労働省労働統計局によって発表される市場参加者に最も注目されている経済指標だ。
「予想を大幅に下回る結果」 = much-weaker-than-expected
「不安定な金融市場となった」 = what proved to be a volatile day
prove to do/be 「〜 だとわかる、判明する」 を使って翻訳。統計結果が発表されて始めて知ることとなったので、こういう状況では、ぜひ使いこなしたいワンランク上の翻訳。これを知らなければ、
became a volatile day などで訳出してしまうだろう。
『労働統計局発表による12月の非農業部門雇用者数によると、米国雇用者数は15万3千人となり、エコノミスト予想の30万人以上の雇用を大幅に下回った。』
「非農業部門雇用者数」 = non-farm payrolls
「米国雇用者数は15万3千人」 = US employers hired 153,000 new workers
通常であれば、
the number of people employed
などとも訳出するだろうが、これでは今ひとつ味気ない。そのような時は、文構造の視点を変えてみる。この場合であれば、日本語原文が 「米国雇用者数は15万3千人」 と名詞的だからといって、英語も名詞的に表現する必要はない。筆者は、「雇用者が、15万3千人の新規労働者を雇用した」 と敢えて、文的に翻訳。
「雇用者が、15万3千人雇用した」 = US employers hired 153,000 new workers
となる。
このように日本語原文を翻訳する時は、文字通りにこだわる必要は決してなく、常に文構成の視点を変幻自在にしておきたい。
「大幅に下回った」 = far below the level of 〜
本稿内、筆者のオリジナル模範翻訳および金融メディア等からの用例は 金融翻訳例文集:金融翻訳チャレンジ に、さらに本ブログ内すべての筆者による模範翻訳等は、金融翻訳・全項目800例文集 に網羅している。
翻訳力、ライティング力をはじめ、スピーキングなどの英語表現力も含めた総合的英語力の向上に、音読学習も取り入れながら、ぜひ活用されたい。
では、また来週をお楽しみに!
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