受験英語と実用英語の力を身につけるために毎日取り組むべきこと

2022年1月9日英語学習法

受験生であっても、社会人であっても、「英語を伸ばしたいけど、何をどのように勉強すればいいか分からない」と嘆く人は多い。

また今の時代は一昔前と比べて目移りするほど教材の種類も多い。特にAIすらも駆使したデジタル化されたものを筆頭に、インターネット上や、スマホやタブレットでアプリ化されているものまで、学習者はどれをどのように活用したらいいか迷うのも当然だ。

そういう複雑な時代だからこそ、筆者はもっとシンプルで、絶対に実力のつく学習法を、ここに自信をもって紹介したい。この学習アプローチは、自身も含め多くの教え子たちの成果で実証済みだ。

周りでどんなに最新テクノロジーを駆使した教材がオンラインで提供され、色とりどりの参考書が電子書籍、あるいは本屋に平積みになろうが、必須の練習は普遍である。Simple is the Best なのである。

また、0 〜 10歳くらいが言語形成期と言われており、体験的に言語にふれているだけで、文法や発音など特別な学習をすることなく流暢で正確な言語習得が可能となるとされる、ちょうど我々日本人が母国語の日本語を身につけてきた過程が、まさにそれである。

ところが、受験生や社会人は、すでにこの言語形成期を過ぎているため、どうしても文法も意識的に学習に加えないとブロークンイングリッシュ (ネイティブではない人が英語を使う時、発音や文法などが誤っていることで、流暢でない、間違った英語という意味がある) になってしまう。

よく海外駐在員等、アメリカで10年仕事をしていましたという方でも、リスニングやリーディングはできても、スピーキングやライティングで文法的にかなり不正確なアウトプットする人などがそれにあたる。これは、例えばアメリカで、ネイティブとしっかりコミュニュケーションをする日々であっても、間違ったアウトプットをネイティブは都度修正してくれるわけではないので、自分で意識的に文法を学習し、より正確な英語を追求しない限りは、どうしてもブロークンのままになってしまう。

以上をふまえ、筆者が推奨する日々の英語学習法は、次の5つである。

  • ボキャブラリー
  • 文法
  • 長文
  • シャドーイング
  • 音読 (シャドーイング以外の取り組みは全て音読をしながら学習する)

確かに、英語学習のアプローチは無限にあり、それがどのような学習法でも、しっかりとした意識をもって繰り返し練習するとき、無駄なことなど何一つないと筆者は考えるが、あれもこれも毎日するのも不可能なので、これら5つに絞っての学習を勧めているわけだ。これにより、スピーキングだけ、とかライティングだけとかではなく、受験英語はもちろん、英検やTOEIC、TOEFL などの資格試験などへの対応を含めて総合的かつホリスティックな英語力を自分のものにしていくことが可能になる。

また、この5つの学習に取り組む際、このことは肚に入れておきたい。

  1. 英語力を上げるぞ、との覚悟を決める
  2. 目標の設定

1 の「英語力を上げるぞ、との覚悟を決める」は、言うは易く行うは難しである。英語圏で生活をしているのであれば、英語学習に必要な環境が整えやすいが、日本国内で、英語力を高めていくのには、Obstacle (障害物)も多い。つまり、年齢が言語形成期から離れれば離れるほど、母国語(我々であれば、日本語)の影響力が強くなるため、少々の英語学習では、母国語に相殺されるか、完全に跳ね返されてしまう。具体的には、1時間の英語を勉強して、残り16時間日本語漬けの生活をしていれば、まず英語の伸びはしれているだろう。もっと分かりやすく言えば、英語を自分の納得のいくレベルに引き上げたい時、一方で日本語を使い、頭の中で日本語で思考していている時間の方が多くては、その間、英語は絶対に伸びていない。それどころか、上記したように、せっかく英語学習を通じて英語脳化しつつあった効果を相殺、あるいは解消することにもなってしまう。

したがって、年齢が言語形成期から離れれば離れるほど、英語力を上げるぞ、との覚悟は must である。そのためには、国内で取り組むにはかなりチャレンジなことではあるが、可能な限り日本語にふれる機会を減らし、逆に英語にふれる機会を増やすことが、英語上達の要諦である。家族や友人、職場でのコミュニュケーションなどは、必要最小限に抑えて、ひとりの時間はもっぱら英語を読んだり、聞いたりするぐらいの覚悟がなくては自分でも納得するほどの英語力に到達することは難しい。また、これぐらいの覚悟で英語学習ができないので、ご存知のように国際的に通用する英語力を有した日本人は少ないのである。

2 の「目標の設定」は、あった方がいい。まずは英語に親しむことから始めるのは大いに結構なことであるが、ある程度のレベルを追求するのであれば、それなりの目標をもつことがモチベーションの維持につながる。それには、やはり英語の資格試験がおすすめだ。

一般的に認知度も高く、おすすめの英語資格試験に優先順位をつけるとすれば、

  1. 実用英語技能検定 (英検)
  2. TOEIC
  3. Cambridge 英語検定
  4. 留学を目標としている学習者は、TOEFL (主に北米の大学/大学院留学)、IELTS (主に、イギリス、オーストラリアなどの大学/大学院留学)

としておきたい。

筆者おすすめの優先順位に関係なく、この中で世界的にもっとも権威ある英語資格試験はやはり Cambridge 英語検定である。実に100年以上の長い歴史をもち、英国の名門ケンブリッジ大学の一部門が提供する英語検定制度である。本当は、この Cambridge 英語検定を目標に自身の学習の進度を客観的に測定していくことがベストであるとは思うが、少なくとも大きな問題が2つある。まず1つ目は、教材が少ない。特に日本の学習者向けに整備された参考書や問題集は不十分である。2つ目は、受験料が高いこと。Cambridge 英語検定の最上級は、Certificate of Proficiency in English (CPE) であるが、受験料 (4技能すべて) は、なんと ¥25,850 である。英検1級、TOEIC は、それぞれ¥9,500、¥7810 と比べても高額であることがお分かりであろう。この額では、何度も何度も受験するのはかなり金銭的にも負担である。

<各種英語資格試験のレベル比較>

レベル区分英検TOEICIELTSTOEFLケンブリッジCEFRレベルEU推奨の到達水準年齢
Beginner (初心者)200未満1.0~1.5
Elementary (初級)5級~4級200~3001.5~2.5A111歳以下
Pre-Intermediate (初級)3級400~5003.0~4.035~45KET(基礎)A214歳
Intermediate (中級)準2級500~6004.0~5.045~55PET(初級)B116歳
Upper Intermediate (中上級)2級~準1級700~8005.5~6.070~80FCE(中級)B218歳、専門学校進学相当の英語力
Advanced (上級)1級9007.0~8.0100~110CAE(上級)C118歳以上、大学・大学院進学相当の英語力
Professional (最上級)9908.5~9.0110~120CPE(最上級)C2通訳・翻訳者相当の英語力

また、英語上達の要諦において、必達の目標とするべきレベルと意識であるが、英語を英語のまま理解/咀嚼できるようになることが肝心である。一般的には、英語が苦手な人ほど、英語を読んだり、見たり、聞いたりする瞬間に、それを頭の中で日本語に置き換えて理解しようとしてしまう。これを当然として問題視もせず、日々過ごしているといつまでたっても上級の英語力は身につかない。もちろん、都度頭の中で日本語に翻訳していては、ネイティブコミュニュケーションのスピードには当然ついていけない。そう、日本人の国際的にも後塵に甘んじてしまう低い英語力の最弱点の1つは、このスピードの不足である。


ボキャブラリー

ボキャブラリーのビルドアップなくして、英語力の高みを追求することは不可能である。ボキャブラリー、つまり語彙力の必要性は、英語などの語学に限らず、すべての分野や学問に通じることではないだろうか。「東京大学に入学するためには、いったいどんな勉強をすればいいのか?」の問いかけに、『どの科目にも必要で、最初に必ず身につけておくべきスキルがある、それは語彙力です』とし、何事も『言葉の力がない状態で勉強しても、絶対にうまくいくわけはない』と断言する人もいる。

まず、ボキャブラリーの学習法をここに紹介しておこう。

<ボキャブラリー学習の心得>

  1. ボキャブラリーリストの用意(市販教材、オリジナルリスト(英英辞典アプリなどの活用)
  2. 暗記しようと思わない、その代わりとして、必ず毎日、何度も何度も見て、聞いて、声に出して、繰り返し、繰り返し、繰り返し確認し、定義とイメージが瞬間的に発想できるようにする (記憶に定着しにくい語彙は、集中的に音読し、その音読をしながら定義とイメージを頭と体全体に擦り込ませる意識(語彙との一体化)が大切)
  3. 2において、定義は日本語で発想しないようにする。(例えば、implement の定義を発想する場合、頭の中で日本語の「実行する/実施する」と思い浮かべるのではなく、はっきり明確にでなくてもいいので、carry out や do あるいは execute などなど、なんとなく “英語的” に “漠然と” 実行する” というニュアンスを記憶するようにする。(ただ、受験英語では、各ボキャブラリーをある程度日本語で定義できなければ、和訳等の問題に対応できない時もあるので、その点は、臨機応変に対応することをお薦めする。それでも、将来的には、ネイティブに通用する上質でスピード感のある英語を体得するためには、ボキャブラリーを含めて、英語を日本語に置き換えて発想する癖はなくす必要がある)
  4. スピードを意識する

1 ボキャブラリーリストの用意(市販教材、オリジナルリスト(英英辞典アプリなどの活用)

ボキャブラリー学習において、何らかのボキャブラリーリストを用意したい。受験生であれば、各学校で推奨されている教材はまず完全制覇を目標とするのがいいだろう。

【受験生編】

<Z会>

<旺文社>

<駿台文庫>

<鉄緑会>

【英語資格試験】

<英検>

【オリジナルボキャブラリー集】

ここでは、上記にとりあげた教材タイプはすでにマスターしてしまっている人、あるいはもっと自分だけのオリジナルなボキャブラリーリストで学習したい人などのために、筆者が取り組んでいるボキャブラリーリストを紹介しておきたい。

筆者の場合、基本的に、スマホやPC環境を駆使して英語につながっていることが多いため、特にスマホに英英辞典のアプリをインストールして、洋書、英文メディア、英語教材などのリーディング中に遭遇した気になるボキャブラリーは、その都度、英英辞典アプリのブックマークに登録し、それをそのままボキャブラリーリストとしてフル活用している。

中でも筆者お薦めの英英辞典アプリは、これである。

他にも英英辞典アプリはたくさんあるが、その中でもロングマンシリーズは、癖のない定義の安定性と、アプリとしての機能性と操作性においてとても秀逸である。もちろん、発音をはじめ、豊富な例文も

操作①: 上図、記録したい単語のスクリーンの右上 ➕ ボタンをクリック。

操作②: 上図、ブックマークスクリーンの右上 『保存』 をクリック。

操作完了: 上図、succinct は、リストの中に保存される。この方法で無制限に気になるボキャブラリーを保存することができる。

あとは、スクロールしながら、スピードを意識して反復学習だ!


2 暗記しようと思わなくて大丈夫、その代わりとして、必ず毎日、何度も何度も見て、聞いて、声に出して、繰り返し、繰り返し、繰り返し取り組む

ボキャブラリー学習における急所は、(定期試験前の一夜漬けのような)暗記学習にならないこと。そうではなく、暗記しようと意識するのではなく、意識すべきなのは、毎日 “繰り返し繰り返し、何度も何度も” 見て、音読すること。すると結果的に、暗記しようと思わなくても、自然に覚えてしまう。また、この反復による自然な学習アプローチで体得したボキャブラリーは、暗記で覚えたものよりも、長期的に記憶できることにもなるのがすごいところ。

ちょうど、筆者を含めて日本人が母国語の日本語の語彙を幼少の頃より、来る日も来る日も見て、聴いて、話しているうちに勝手に覚えてしまうことと同じである。確かに、言語形成期 (0 〜 10歳くらい) を過ぎた後は、どうしても母国語のようには習得しにくい面はあるのだが、それでも毎日、毎日、朝に、昼に、夜にと、語彙リストをひたすら見て、音読して、できれば話して使ってみたりもして(ソロ英会話などの練習法)いると、気づけば完全に覚えてしまう。

語彙を覚えるとは?

また、ここで筆者のいう、“覚える” ということの定義は、例えば、英単語 enthusiasm を見たり、聴いたりしたその瞬間 = 0.1 秒以内に その定義と漠然としたイメージができることである。

ちょうど母国語の日本語で、

『りんご (林檎)』 と見たり、聴いたりしたその瞬間に、 のイメージと、果物のりんごという定義が発想できることである。

『走る』 と見たり、聴いたりしたその瞬間に、 のイメージと、走るという動作の定義が思いつくことである。

つまり、ボキャブラリーというものは、暗記学習でしているように、その単語を見たり、聴いたりした時、「なんだっけ」などとじっくり考えたり、思い出そうとしたりするようなスピードの遅さでは、実用的には使えないのである。また、これが日本の義務教育での文法・解釈偏重型英語学習で身につけてしまった日本人の悪い癖にもなっている。実際、受験の英語でも、資格試験の英語でも、何か見慣れないボキャブラリーに遭遇し、それを思い出そうとしたりなど、ボキャブラリーがらみでのロスタイムを合計すると、相当な時間になるのではないだろうか。

enthusiasm を見たり、聴いたりした瞬間、咄嗟に

enthusiasm → 見る/聴く  → 0.1 秒以内 → 熱意

となるまで、ボキャブラリーリストを、1日の中で、繰り返し、繰り返し、何度も何度も、見て、声に出す。

語彙の定義やイメージがすぐに浮かばない時は?

語彙をスピーディーに確認している際、咄嗟にイメージあるいは定義が浮かばない時は、すぐに答えを確認してもいい

例えば、下記のようなボキャブラリーリストを用意していたとする。

【ボキャブラリーリスト サンプル

sector
available
financial
process
individual
specific
principle
estimate
variables
method
data
research
contract
environment
export
source
assessment
policy
identified
create
derived
factors
procedure
definition
assume
theory
benefit
evidence
established
authority
major
issues
labour
occur
economic
involved
percent
interpretation
consistent
income
structure
legal
concept
formula
section
required
constitutional
analysis
distribution
function
area
approach
role
legislation
indicate
response
period
context
significant
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〔ボキャブラリー学習プロセス〕

  1. 上から順番に、可能な限りスピーディーに(速ければ速いほどいい)、音読しながらボキャブラリーを確認していく(電車の中など、音読しにくい場所の場合は目視)。
  2. その確認とは、定義とイメージが瞬間的に発想できること。ただ、上から順番に一語々々ボキャブラリーを、猛スピードで確認していく時は、必然的に、明確にイメージ化することは難しくなる。そのくらいのスピードで学習を進めている場合は、ぼんやりとしたイメージでもいい。
  3. 定義もイメージもすぐに発想できない時は、下手に思い出そうとしないで、すぐに回答を確認していい。(上記、ボキャブラリーリストのサンプルには回答はついていないが、市販の教材や筆者お薦めの電子書籍辞典アプリなどでは、すぐに回答をチェックできるはずだ。)
  4. 基本的には、これら1、2、3 を日々、ひたすら繰り返し練習するわけだが、ボキャブラリーをより自身の長期記憶へ擦り込ませるためにも、いろいろ工夫してみるといい。筆者の場合は、上から順番にボキャブラリーを確認し進めていくとき、定義もイメージも発想できずにつまづいてしまったボキャブラリーがあれば、すぐにその回答を確認した後、罰ゲームとして、再び一番最初に戻り、順番にやり直すことにしている。このやり方だと緊張感も生まれ、なかなかスリリングだ。


文法

長文

シャドーイング

音読


絶対的な効果につながる音読 = 只管朗読を勧める國弘正雄先生