金融分野において、ネイティブのライティングには好まれて登場するが、日本人が使いこなせていない英語表現を中心に、ワンランク上質の翻訳を探求する。その視点は通常の教本や文法書などでもあまり例をみない鋭いアングルからの説明が特徴。また、英語例文として、筆者の模範翻訳をふんだんに紹介しながら実践的にまとめている。

ワンランク上の金融翻訳

今回は、【複数の文を1文にするワンランク上の翻訳テクニック① 関係詞 Of Whom/Which】と題して、クオリティの高い英文翻訳やライティングをする上で、ぜひ使いこなしたいテクニック  ~ of whom/which を紹介していきたい。

翻訳やライティングをするとき、単純な短い文ばかりの英文構成ではとても稚拙なものになってしまう。もちろん1文々々が長ければいいというものでもないが、短い1文だらけのものよりは、より高尚かつ洗練された印象にはなりやすいだろう。

そんな時に役立つテクニックが、~ of whom/which である。

ここでの whom/which は、非限定用法の関係詞だ。

関係詞の使い方として、大きく2種類あり、限定用法と非限定用法がある。

その違いを確認しておくと、

① 限定用法の関係詞

I have a son who is a doctor.

「私には、医者の息子がいる。」

② 非限定用法の関係詞

I have a son, who is a doctor.

「私には、1人の息子がいて、その子は医者である。」

つまり、①の限定用法では、医者の息子がいるが、他にも息子がいる可能性も考えられる文となるが、②の非限定用法では、1人の息子しかおらず、そしてその息子のことを補足的に説明する形で、非限定用法の who が用いられるというわけだ。またここで忘れてはいけないのは、非限定用法では、関係詞 who や which の前に必ずカンマが必要となる。

そして、②の非限定用法の日本文を確認すると、

「私には、1人の息子がいる。そしてその子は、医者である」と、2文に分かれているものが、関係詞 who によって1つの文に結合されていることが構造的に理解できる。つまり、

I have a son. And he is a doctor. ⇨ I have a son, who is a doctor.

これが、先行詞(文)を補足的に説明する形の、関係詞非限定用法の使い方だ。

さて、本稿では冒頭でもふれたように、この非限定用法を使う。さらに言えば、その応用編という位置付けになる。シンプルな文で、その使い方を紹介すると、

例文①

「私には、2人の娘がいる。そして、彼女ら2人とも日本へ行ったことがある。」

I have two daughters, both of whom have been to Japan.

例文②

「その会社は、日本中に支店がある。その多くは、業績がいい。」

The company has branches across Japan, many of which have delivered a good performance.

という具合だ。

この ~ of whom/which が使いこなせると、翻訳

米国証券取引委員会(SEC)がここ最近、引受人の潜在的な責任を強化する提案をしたため、ゴールドマン・サックスやシティバンクなどの銀行は怖気づき、市場から撤退してしまった。

Recent proposals from the US Securities and Exchange Commission to increase potential liability for underwriters have spooked banks such as Goldman Sachs and Citibank, both of which have retreated from the market.

そのauthenticity (真正性) を確保するために、130年の歴史を誇る金融経済新聞として、世界中のビジネスパーソンから必読紙として支持を得ている Financial Times でその用例を見ておきたい。

<Financial Times からの実用例>

Spanish and Portuguese debt was also hit, while the selling spread to European bank stocks, many of which are heavily exposed to a debt sell-off due to their holdings of government bonds.

<対訳>

スペインとポルトガルの債権も打撃を受け、売りが欧州の銀行株に広がり、そしてその多くは国債を保有しているため、債権売却の影響を大きく受けている。