※「金融翻訳チャレンジ」メニューでは、毎週、筆者が課題文を提供。金融翻訳に挑戦してみよう!
※筆者模範翻訳は、2020年12月27日(日)掲載予定
<課題文>
先週のウォール街は、3日間の乱高下を経て、ほぼ横ばいでクローズした。同3日間、投資家やトレーダーらは、株価を押し上げる何か十分な好材料はないかと思案していた。
S&P500指数は、バイデン政権が富裕層のキャピタルゲイン課税を引き上げるとの報道を受け、ニューヨーク市場では前日1.2%の下落をした後、金曜日は1.5%高でクローズした。
<筆者の模範翻訳>
Wall Street closed the last week largely flat, following a bumpy three days during which investors, as well as traders debated whether there was enough positive news on the horizon to push stocks higher.
The S&P 500 index ended Friday up 1.5per cent in New York, after closing 1.2 percent lower in the previous session on reports that the Biden administration would raise capital gains tax for wealthy individuals.
<解説>
『先週のウォール街は、3日間の乱高下を経て、ほぼ横ばいでクローズした。』
「3日間の乱高下」 = a bumpy three days
「乱高下」 = bumpy
「乱高下」 は、金融翻訳には必須の語彙であり、同義語には、
- choppy
- rough
- turbulent
- volatile
などもあるので、併せて確認しておきたい。
「ほぼ横ばいでクローズした」 = closed ~ largely flat
『同3日間、投資家やトレーダーらは、株価を押し上げる何か十分な好材料はないかと思案していた。』
ここでは、日本語の原文通りに、2文に分けて翻訳してももちろん問題はない。ただ、ワンランク上の翻訳に仕上げるためには、ぜひ関係詞などを駆使して、1文にまとめたいところ。
その際は、「3日間」 という時の表現に着目し、three days during which ~ としていくと流暢に翻訳できる。
a bumpy three days during which investors, as well as traders debated whether there was enough positive news on the horizon to push stocks higher.
「思案していた」 = debate
debate は通常、「議論する、討論する」 などで最も知られているが、「思案する」 などの定義もある。英英辞典 Oxford Dictionary では、
Oxford Dictionary: to think carefully about something before making a decision
こうした定義も覚えておくと、より翻訳の懐を深くすることが可能となるだろう。
『S&P500指数は、バイデン政権が富裕層のキャピタルゲイン課税を引き上げるとの報道を受け、ニューヨーク市場では前日1.2%の下落をした後、金曜日は1.5%高でクローズした。』
「S&P500指数」 = the S&P 500 index
他にも、the benchmark S&P 500 index などと、benchmark が添えられて表現することも多い。
「キャピタルゲイン課税」 = capital gains tax
「富裕層」 = wealthy individuals
「富裕層」 も金融翻訳ではよく登場するが、
- the rich
- rich individuals
- the wealthy
- high income individuals
- high income taxpayers
- high-net-worth individuals
などでも言い換え可能だ。
本稿内、筆者のオリジナル模範翻訳および金融メディア等からの用例は 金融翻訳例文集:金融翻訳チャレンジ に、さらに本ブログ内すべての筆者による模範翻訳等は、金融翻訳・全項目800例文集 に網羅している。
翻訳力、ライティング力をはじめ、スピーキングなどの英語表現力も含めた総合的英語力の向上に、音読学習も取り入れながら、ぜひ活用されたい。